Network Radio; Uniwa F30S (Inrico S100); PoC

Push-to-talk over Cellular 略して PoC です。いわゆるネットワーク無線とかウォーキートーキー(walkie-talkie)というやつでして、日本では、トランシーバーとか携帯用無線電話機とか無線機と呼ばれているものです。例えば、27MHz帯のCB無線、特定小電力トランシーバー、デジタル簡易無線、アマチュア無線といったものがあります。PoCというシステムでは、無線の部分にインターネットの通信を使います。





PoCがインターネットへ接続するにはWiFi接続又は4G LTE(携帯電話網データ通信)接続を使います。最近のPoC端末はAndroid OSを利用しているものが多いので中身はほぼスマホです。PoCアプリはデータ通信さえできれば使えるので、データ通信SIMで十分ですが、スマホなので通話も可能なSIMを入れておけば普通に携帯電話として携帯電話番号で発着信することもできます。また、スマホなので、GMailとかスケジュールとかSNS等のアプリも使えます。

PoCはスマホですがトランシーバー寄りという比較的用途がニッチなので、ひと昔かふた昔前のAndroid OS versionなのが多いです。それに連れてハードウェアも最近の最新スマホに比べると古臭くて、画面が小さいとか対応しているLTEバンドがちょっと少ないものがあったりします。しかしトランシーバー寄りの造りになっていて、例えばPTTスイッチがあったりスピーカーの音量が遥かにスマホを超えていてアウトドアで使うトランシーバー並みだったりします。更に一般的なスマホに比べて頑丈でゴツイです。トランシーバー寄りなのでストラップが付けられる機種もありますが基本的には本体にベルトクリップがビス止めされています。

日本でも業務用に提供しているシステムインテグレータがあるようですが、コロナ禍になって Zoom や Teams 等が爆発的に普及したのとは違って、依然としてちょっとマイナー感が漂っているのがもったいないような気がするのは小生だけではないかもしれないと思います。そういう背景があって、新入学や新社会人が、スマホを新しくする際にPoC端末を選択肢にできるような市場の状況はありません。例えばAliExpress辺りで注文するが簡単な人にとっては入手が簡単ですが、それ以外のほとんど多くの人々にとっては入手が簡単ではないと思います。だからレビュー情報も少ないのだろうと思います。

AliExpressでF30Sという型名のPoC Network Radioを購入してみました。RAM 1GB、ROM 8GB、画面は2.8インチQVGA(320x240)静電容量式タッチスクリーン、CPUはMT6739 Cortex A53クアッドコア1.3GHzプロセッサ搭載でOSはAndroid 8.1のSIMフリー、IP54防水携帯電話端末です。SIMサイズはマイクロです。最大容量64GBのmicroSDカードが使えます。

なぜかポータブルホットスポット(テザリング)機能がありませんので、この端末(F30S)をポータブルWi-Fiルーターとして利用することはできません。

日本国内で利用する場合、対応周波数帯はヨーロッパ仕向けを選びます。

ヨーロッパ仕向け(2G: GSM 850/900/1800/1900 MHz; 3G: WCDMA 850/900/2100 MHz; 4G: FDD-LTE B1/B3/B5/B7/B8/B28A/B28B, TDD-LTE B38/B40/B41)

アメリカ仕向け(2G: GSM 850/900/1800/1900 MHz; 3G: WCDMA 850/1700/1900 MHz; 4G: FDD-LTE B2/B3/B4/B5/B7/B8/B12/B17/B28A/B28B/B66; TDD-LTE B38/B40)

主な特徴は次のとおりです。

Google Play あり(プレイストアから各種アプリをダウンロード可、PoCアプリZelloもインストール可能)。

GPSあり(A-GPSもサポート)、WiFi (IEEE 802.11 a/b/g/n/acをサポート2.4GHz及び5GHz無線LAN)サポート、WiFiポータブルホットスポット機能あり、Bluetooth4.2(BLE)サポート、Gセンサ距離センサ光センサ、デュアルマイクノイズリダクション、36mmΦ2Wスピーカー、充電及びデータ転送にはマイクロUSB、外付けスピーカーマイクはモトローラM5型インターフェイス、13MPオートフォーカス式背面カメラ・2MP背面カメラ、取り外し可能な4,000mAhリチウムイオンポリマー電池(最大21時間の作業時間、最大180時間のスタンバイ時間)、動作温度 -5℃〜55℃、保管温度 -20℃〜70℃。

FMラジオ無し、懐中電灯機能無し、NFC機能無し、SOSボタン有り但しカスタマイズ機能無し、急速充電機能無しAliExpressの商品ページではこちらの機能は全部あると書いてありますが、小生の手元に届いたF30Sには、FMラジオも懐中電灯機能もNFCもSOSボタン等カスタマイズ機能も急速充電機能もありませんでした)。また、5GHz WiFi対応と書かれてますが未対応でした。UNIWA F30Sのマニュアルには、下の図のとおり9番ボタン(いわゆるマナーモードにするボタン)が存在するのですが、小生の手元に届いた個体にはそれがありませんでした。

小生が注文したのは2022年03月下旬で送料無料(送料込みという意味)¥17,887、そして¥123ストアクーポン及び¥457AliExpressクーポンの値引きが適用されて合計額¥17,306でしたが、2022年05月上旬現在の価格は送料無料で19,734円でした。差額が¥2,428になりますがそれはもしかしたらFMラジオ機能・懐中電灯機能・NFC機能・SOSボタン等カスタマイズ機能・急速充電機能・5GHz WiFi機能のぶんなのでしょう。

ちなみに、注文から数週間くらい経過してから、AliExpress経由で販売店から連絡があり、NFC機能が無いのですがどうしますか?と、日本市場での常識に照らすと変てこな質問が来ました。普通ならキャンセルしますという反応をするところですが、なにしろ興味深くて面白いので、変てこなところを含めてまとめて勉強するつもりで、キャンセルにせず、了承するので発送してくれと返答したんです。おもしろいですね~

小生の気持ちの中に「同じモノなら安い方がいい」と言うときの前提として「全く同じ商品であること」というのがありましたが、AliExpressではこの前提が通じないことを身をもって体験させていただいた気がします。小生の勝手な想像でしかありませんが、たとえば今回のF30S、UNIWA社が出荷をそれなりに把握している本物?のF30S仕様と100%一致しているモノの下位の存在があたりまえの市場という感じかなと思います。すなわち、おそらく試作品や訳アリの部品も含めて部品は中華人民共和国内で製造されているからそれらは比較的柔軟に融通できてしまうのかもしれません。しかも最終製品に組み立てを行う工場等も中華人民共和国内にあってマンパワーの融通もあるのかもしれません。そういう状況は終戦後から高度成長期の日本の京浜工業地帯にだって普通にあったと思われます。すなわち、試作目的や出荷目的など訳ありや不良も含めて、価値の異なる部品で、組み立てたラインも違うかもしれない、付かない部品は付けない、足りない部品も当然付けない、そういう様々な、いわば勝手(野良)な派生機種を含めて、いろんな価値(値段)のF30Sがあるのかもしれません。そういう背景がある?から、値段の安い奴を希望すると、それなりのモノがきちんと?届くシステムなのかもしれないと妙に感心してしまいました。そういう仕組みなのだとすると、今度はちゃんとその仕組みを前提に品定めをしてショッピングするのが賢明ですね。ちょっと違うかもしれませんが、なんだか昔の秋葉原みたくてワクワクしてしまいます。

開封の儀

中華人民共和国から発送される郵便物や小物のビニール袋の中から出てきたのが角がつぶれたPoC Radio F30Sの外箱です。見事に打撲症です。中身がちょっと心配です。外箱の中に製品の箱があるのかと思ったらこれがモロ製品の箱でした。でも幸運にも中身への打撲は無さそうでした。画面にひび割れが無いか、電源がちゃんと入るのか心配です。

 

 

下の写真に写っているドライバは本体の裏蓋をとめている特殊ネジ専用です。ベルトクリップのネジは普通のプラスドライバでOKです。本体に付属のストラップを通してあげました。電池側の電極シールを剥がして電池を設置する準備が整いました。

小生はマイネオのDプランの音声通話+データ通信用のSIM(nanoサイズ)をmicroサイズSIMアダプタをかませてF30Sに設置しました。microSDカードは手元にあった8GBのやつを入れて本体メモリーと合体させる初期設定を選びました。SIMソケットはひとつだけです。

CEマーク・FCCマーク・RoHSマークのあるシールをよく見るとこのように書いてありました。

Model: S100  Network: LTE/WCDMA/GSM
IMEI: xxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxx
S/N: XXXXXXXXXXXXXX
INRICO ELECTRONICS CO.LTD
Made in China

AliExpressの商品ページではUNIWA製のF30Sであるとして売っているのですが、ラベルはINRICO社製の型名S100なのです。おもしろいですね~

下の写真でベルトクリップの下端と本体の底との間に長方形の平坦な部分が見えると思いますが、AliExpressの商品ページではUNIWAと書かれたシールが貼られています。ちなみに、INRICO社のホームページで確認してみますとINRICOと書かれたシールが貼られています。小生の手元に届いた商品の場合はシール無しです。おもしろいですね~


さて、下の写真が問題のマナーボタンがありませんの図です。AliExpressの商品ページに掲載されているUNIWA社製F30Sの写真には写っているボタンが小生の個体にはありませんでした。

ちなみに、INRICO社のホームページで確認したり、マニュアルダウンロードサイトでINRICO S100のマニュアルを確認したところどちらにも問題のボタン(マナーボタン)がありました。

おもしろいですね~

上の写真からでも分かる通りF30SはUSBインタフェースを備えています。普通のAndroidスマホと同様に充電及びファイル伝送に使います。型は micro USB Type B なのですが一般的なAndroidスマホ端末に比較すると穴の深いところに micro USB Type B メスが控えているため、金具のところが普通よりも長いオスプラグでないと届きません。そういえば似たようなAndroidスマホが以前ありましたよ。Freetel社のFT132Aという端末のことでブログで「普通のUSBケーブルが使えないこと」として紹介されていますので以下に抜粋しておきます。

【普通のUSBケーブルが使えないこと】FT132A用のUSBケーブルは、マイクロBコネクタの金具の長さが少し長めです。多くのUSBケーブルがFT132Aでは利用できないでしょうから、FT132Aの販売元が売っているいわゆる純正USBケーブルを入手するのが無難だろう。しかし、単にマイクロBコネクタの金具の長さが少し長めなだけですから、プラスチックのモールドの部分をナイフで削って長さを少し長めにしてやれば利用できます。あるいは、ダイソーで売られている(らしい)マイクロBコネクタのUSBケーブルを入手してもよいでしょう。

また、上の写真でUSBソケットのカバーの右側に写っているマイナスネジと長方形のある部分は、スピーカーマイク端子カバーです。商品説明によりますとモトローラM6型という仕様らしいので、AliExpressでM6型インタフェースのスピーカーマイクを購入したところ口が合いませんでした。

届いた個体を見たところ、表にはMOTOROLA の文字とロゴが、裏には PMMN4021A という型番がありました。本物は¥5,000くらいするけど送料込みで¥1,538で買えてしまったことになりますが、これも柔軟に融通を利かせて、余っていた部品を組み立ててしまったものでたまたま本物向けのMOTOROLAのシールがあったのかもしれないと想像すると楽しすぎる世界だと思います。

このPMMN4021AのM6プラグはF30Sに大きくて合わないことは分かったのですが、ではいったいどうすればいいのか困って調べを進めたところ、実はM5型だという説を見つけましたが、裏をとれないままAliExpressをうろうろしていたところ、形状が酷似しているけれどもM6型よりも小ぶりなプラグについて、この二つは似ているけれどもちがうんだよんと紹介しているところを見つけました。その小ぶりなプラグの名称は GP328Plus プラグというらしいんです。小生がよく分からず買ってしまって、大きくて付かなかった奴は、GP328 プラグというらしいです。Plusの付かないのがM6でPlusの付く方がM5なのかしらん?




AliExpressで買いなおしたスピーカーマイクはこれです。Network Radio F22, F25, GP328plus/338plusトランシーバーPTTスピーカーマイクとして紹介されていました。マイクスピーカーの形状がありふれていて面白味に欠けますし、F30Sで使えるとは明記されてませんが、F30SはF25と同じはずだったから問題ないだろうと考えて、2022年04月下旬に注文したときの値段は、送料込みで¥1,791でした。

届きましたので早速装着して動作確認がとれました。

二つのスピーカーマイクの端子を並べてみました。

次は、SOSボタンです。UNIWA F30S(INRICO S100)という端末のユースケースはPoCです。PoCサービスは個人用途でもとても便利だと思いますが、おそらくちゃんとはまる業務用途だともっともっと便利だと思います。業務用途で使う前提のときには、おそらくそのような業務用のアプリがプリインストールされていて、そのアプリがSOS ボタンや [<] ボタンや [>] ボタンのカスタマイズ機能を提供してくれるに違いありません。複数の青色のアイコンからなるそのアプリらしきものが画面を埋めている様子をUNIWA社やINRICO社のホームページで見かけました。しかし、小生の手元に届いた個体にはそういったアプリは入ってませんでした。だからだろうと思われますがボタンのカスタマイズができませんでした。

しかし、PoCアプリのZelloをインストールすると、Zelloがフォアグラウンドで起動しているときだけ、SOS ボタンや [<] ボタンや [>] ボタンのカスタマイズ機能が利きます。

 

 

 


2006年頃にドコモがプッシュトークという商標のサービスを行っていたことがあります。FOMA 900シリーズや700シリーズ等の端末がプッシュトークサービスに対応していました。トランシーバーやPoC端末に比べると極めて押しずらい数ミリメートル角くらいのPTTボタンが付いていて、PTTボタンを押す度に課金されるというユーザー庵フレンドリーなサービスでしたからあっという間にサービス終了になってしまいました。

ここで紹介しているようなPoCサービスを提供している企業が世界中には複数あります。日本にもあるようです。中でも一番人気があるPoCサービスはZelloだろうと思います。Zelloに人気がある理由は、業務用途ではない、個人利用者には個人利用の範囲で必要な機能を無料で提供してくださっていることだろうと小生は思います。期間限定お試し無料というのではなくてシンプルに無料なのです。無料だから当然、レイテンシとかロスとか何も保障ありませんが、それなりに使えるから便利だし、なじめるし、啓蒙になるし、いざ業務用途に使うときには第一候補になると思います。

普通にLINE通話とかMessenger通話があるじゃないか、あるいはRakuten MobileでRakuten Link使えばいいじゃないか、わざわざシンプレックスでトランシーバーみたいに、了解しました・どうぞ!みたいに言わなくていいじゃないかと思うなら、敷居をこえてまでPoCを使う必要は無いだろうと思います。

しかしですね、実際PoCを使ってみると、というか、アマチュア無線などでトランシーバーの使い勝手を分かっている場合には、そこには独自の代えがたい便利さがあるんですよ。小生の偏見でその神髄を挙げてみますと、やはり「一対多の音声による同時連絡が簡単」なことではないかと思います。

あらかじめチャネルを合わせておき待機していればいいんです。もし自分から皆に音声を届けたいときにはPTTボタンを押して話すだけです。相手先を選ぶ必要がありません。同じチャネルに合わせて待機している全てのPoC端末にほぼ同時に音声が届きます。

アマチュア無線のトランシーバなど電波を直接送受信しあって音声の交換を行うシステムの場合には、携帯電話網の電波とは無関係だからそれが圏外になっていようがいまいが関係なく、トランシーバが自ら発する電波が届く範囲なら、音声の交換ができます。だから、携帯の電波が圏外になるような、林道ツーリング、キャンプ、ハイキング等で活用できます。一方、PoCは携帯の電波が圏外だと全く使えません。

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